建築やリフォームの業界では、見積書の作成方法によって作業時間が大きく変わります。特に、㎡単価やm単価で見積もりを作成する場合、時間がかかることが多くあります。それに対して、商品代と施工費を分けて見積もる「材工分離方式」を採用することで、作成時間を大幅に短縮できる場合があります。この記事では、見積書作成の違いを詳しく解説し、効率的な見積もり作成方法について紹介します。
1. ㎡単価・m単価での見積書作成にかかる時間
外壁塗装やリフォーム業界では、**㎡単価(面積単位)やm単価(長さ単位)**で見積書を作成することが一般的です。この方法では、塗装や施工する箇所の面積や長さを正確に測り、それに基づいて費用を計算します。特に、**材工共(材料費と施工費が一体となった見積もり)**の場合、単価を調整することが多いため、時間がかかることがあります。
例えば、足場代金や付帯部分の単価を他社よりも安く設定することで、見た目上の価格を安く見せる手法がよく使われます。この場合、最終的に出したい売値に合わせて単価を調整するため、計算に時間がかかりがちです。
また、材工共の見積もりは、最終的な売値を調整するために相場の単価を「いじくる」ことが一般的です。例えば、㎡単価やm単価を他社と比較しつつ、売上や利益のバランスをとるため、計算に手間がかかることがあります。
2. 材工分離見積もりのメリットとデメリット
材工分離とは、商品代(材料費)と施工費を分けて見積もる方法です。この方式には、以下のメリットとデメリットがあります。
メリット
- 透明性が高い:商品代と施工費を明確に分けることで、お客様に対して透明性のある見積もりを提供でき、信頼を得やすくなります。
- 見積もり作成が簡単になる:材工分離では、それぞれの項目を分けて見積もるため、計算がシンプルで、見積もり作成の手間が軽減されます。
- 短時間で見積もりが作成できる:弊社では材工分離を採用し、見積もり作成にかかる時間を1~2時間から、わずか15分~30分に短縮しました。この効率化によって、空いた時間を他の業務(管理や施工)に充てることが可能になりました。
デメリット
- お客様が複雑に感じる場合がある:商品代と施工費が別々に提示されるため、価格が高く見えることや、お客様が内容を理解するのに時間がかかる場合があります。
- 競合他社との比較が難しい:材工共で見積もっている他社と比較すると、同じ基準での比較がしにくく、お客様が混乱することがあります。
3. 材工共見積もりのメリットとデメリット
一方で、**材工共(材料費と施工費をまとめた見積もり)**には以下のような特徴があります。
メリット
- シンプルで分かりやすい:お客様にとっては、合計金額が一目で分かるため、シンプルで分かりやすい点が評価されます。特に、価格に敏感なお客様には、総額が明示されていることで安心感を与えることができます。
- 他社との比較がしやすい:同じく材工共で見積もりを提示している他社と比較する際には、単純に価格を比較しやすく、競争力が保てます。
デメリット
- 細かいコストが不透明:材料費と施工費が一緒になっているため、お客様にはどの部分にどれだけの費用がかかっているかが分かりにくくなり、不信感を抱かれる場合があります。
- 時間がかかる:前述の通り、最終的な売値に合わせて㎡単価やm単価を調整する必要があるため、見積もり作成に時間がかかります。また、材料費や施工費の調整を繰り返すため、効率が悪くなることがあります。
4. ㎡単価・m単価の調整の実情
㎡単価やm単価での見積もり作成は、実際のところ、相場の単価を調整するための手段として使われることが多いです。たとえば、足場代金の㎡単価や付帯部分の単価をあえて安く設定し、他社よりも安く見せるという手法があります。これにより、お客様には一見すると安く見える見積もりが提示されますが、最終的な総額を調整するため、実際の価格は変わらないことが多いです。
また、㎡単価を調整する理由の一つとして、売上や利益のバランスをとるためという実情もあります。たとえば、2200円/㎡で30㎡の差が出た場合、6.6万円(税別)の費用が追加されることになります。しかし、材料費や手間を考慮すると、この差は実際にはそれほど大きなものではないことも多いです。
5. 原価計算の仕方と実際の材料費
弊社では、足場業者との契約で30坪以下、35坪、40坪といった一式計算を行っています。たとえば、外壁面積50㎡ごとに材料費が変動するため、面積が大きく変わらない限り、数㎡の差は大きなコスト変動にはなりません。
たとえば、170㎡と200㎡の外壁を塗装する場合、どちらも上塗り塗料缶は4缶を発注します。塗る面積に30㎡の違いがあっても、手間が半日程度しか変わらないため、㎡単価で計算すると大きな金額の差が出ますが、実際には材料費の差は誤差に過ぎないことが多いのです。
さらに、40㎡の屋根の場合、1缶発注する必要がありますが、10㎡分がロスとなり、定番色でない場合は廃棄費用も発生します。これにより、㎡単価に意味が薄れるという現実があります。
6. 施工費の難しさ
施工費の計算は、材料費と比べてさらに難しくなります。たとえば、シリコン塗料を使った場合、材料費の誤差は1~2缶程度で、赤字になったとしても1.2万円~2万円程度です。しかし、施工費に関しては、作業時間が0.5日~1日ずれるだけで大幅な損失が発生します。
たとえば、1時間の洗浄作業と1時間の高所作業(急勾配の屋根塗装)では、リスクや労力がまったく異なりますが、同じ料金で請求するのは不合理です。そのため、施工費は経験に基づいて、**「この家やこの素材にはこれくらいの日数がかかる」**という見込みで計算する必要があります。
7. 効率的な見積もり作成の方法
最近、弊社では材工分離方式を採用することで、見積もり作成時間を大幅に短縮しました。以前は1~2時間かかっていた見積もり作成も、15分~30分で完了するようになりました。これにより、空いた時間を管理や施工に充てることができ、より効率的な業務運営が可能になっています。
材工分離方式を導入することで、見積もり作成の手間が減り、施工にかかる時間や費用を明確に把握できるようになりました。これにより、コスト管理がしやすくなり、結果的にお客様にも透明性のあるサービスを提供できるようになっています。
まとめ
お見積書の作成方法によって、作業時間やコスト管理に大きな差が生まれます。㎡単価やm単価での見積もりは、最終的な売値を調整するために時間がかかることが多く、材工共見積もりはシンプルですが、透明性に欠けることがあります。反対に、材工分離方式を採用することで、見積もり作成の効率が向上し、空いた時間を他の業務に活用できるようになります。
見積もり作成の効率化は、会社の運営にとって重要なポイントであり、正確かつ迅速な見積もりを提供することが、お客様の信頼を得るためにも不可欠です。